若宮正子さんとは?母親の介護とパソコン購入がホームページ公開、アプリ開発へとつながった!
更新日:2024.07.01中高年になると加齢による衰えから、新しいことを学ぶときに自信が薄れてしまいがちです。そんなときは若宮正子さんの勉強方法が参考になります。今回は、若宮正子さんの経歴や作成したアプリを簡単にご紹介し、若宮正子さんの勉強方法について解説します。若宮正子さんの勉強方法がわかる書籍も紹介しているので、あわせてチェックしてみてください。
定年が迫っている50代の会社員です。プログラミングに興味があるのですが、最近80代でiPhoneアプリを開発した若宮正子さんのことを知りました。どのような方で、どのような勉強法をされたのか知りたいです。
定年目前でパソコンを学び、80歳でゲームアプリを開発した高齢者の方です。若宮正子さんによると、新しいことを勉強するときは、極めようとしないことが重要とのことです。好きなことや興味のあることがあれば、純粋に楽しむことから始めましょう。
目次
結論 : 一目でわかる! 若宮正子さんの年齢別活動年表
若宮正子さんの年齢別活動年表を以下でまとめました。
若宮さんの経歴からわかることは、定年退職後の60代からパソコンを始め、60代以降においてもアプリ開発や書籍の出版など幅広く活躍していることです。セカンドキャリアを考えている人にとっては、若宮さんの経歴から「今からでもパソコンを習得してIT人材になるのは決して遅くはない」ということが学べるでしょう。
1) 就職まで
0歳:東京都生まれ。物心ついたから頃から戦争に
10歳:終戦
19歳:高校卒業後、三菱銀行(現:三菱UFJ銀行)に入行
2) 銀行勤務 ー 定年退職まで
56歳:バブル崩壊を経験
3)定年後 ー パソコンライフと書籍執筆時代
62歳:退職後、パソコンを購入して本格的にパソコンを始める
63歳:書籍「『マーチャンがゆく 北欧編』未来文化社」を出版
64歳:シニア世代向けの交流サイト「メロウ俱楽部」に参加。書籍「『熟年さんのパソコン物語』里文出版」を出版
67歳:書籍「『パソコンでいきいきシルバーライフ』里文出版」を出版
73歳:リーマンショックを経験
79歳:書籍「『花のパソコン道 パソコンでいきいきライフ―熟年さんのパソコン物語』インプレスR&D」を出版
4) 80代 ー iPhoneアプリ「Hinadan」開発とその後
81歳:iPhoneアプリ「Hinadan」を開発。Apple社CEOからWWDC(アプリ開発者向けイベント)に招待される
82歳:国連社会開発委員会で講演。内閣府主催の「人生100年時代構想会議」に最年長メンバーとして参加。書籍「『60歳を過ぎると、人生はどんどんおもしろくなります。』新潮社」、「『明日のために、心にたくさん木を育てましょう』ぴあ」を出版
84歳:書籍「『独学のススメ 頑張らない!「定年後」の学び方10か条』中央公論新社」、「『老いてこそデジタルを。』1万年堂出版」を出版
85歳:デジタル庁デジタル社会構想会 構成員、内閣官房IT総合戦略室「デジタルの日」検討委員会 構成員に就任
88歳:書籍「『88歳、しあわせデジタル生活 もっと仲良くなるヒント、教えます』中央公論新社」を出版
参照元:NHK 教えて先輩! 若宮正子さん【後編】 “お荷物社員”と言われていたけれど…
若宮正子さんの履歴書を掘り下げる
ここでは、若宮さんの履歴書をもう少し掘り下げて見ていきます。
学歴
若宮さんは太平洋戦争開戦後に国民学校に入学しました。9歳の時には半年間の学童疎開も経験し、父の転勤に伴って小学4年から中学1年までは兵庫県で過ごしています。そして高校は東京教育大学附属高等学校に進学しました。
職歴(定年まで)
東京教育大学附属高等学校を卒業後は、三菱銀行(現:三菱UFJ銀行)に入行します。本人曰く、入行当初は「仕事ができる人」ではなかったそうですが、企画開発職に異動してからは活躍が目立つようになりました。男女雇用機会均等法の施行後は昇進を果たし、当時では珍しかった女性管理職のポストに就任。定年退職する頃には、関連会社の副部長にまで昇進しています。
職歴 (定年後 Hinadan開発以前)
若宮さんは定年後もしばらくの間、週3日のペースで銀行勤務を続けます。また、母親の介護などによって外出の機会が減り、人付き合いが減ってきてしまったことから、人との交流のためにパソコンを購入しました。パソコン購入後は、シニア世代向けの交流サイト「メロウ俱楽部」に参加し、現在は副会長に就任しています。2014年には「TED×Tokyo」に登壇し、英語でスピーチを行っています。
職歴 (定年後 Hinadan開発後)
若宮さんは、シニア世代向けのゲームアプリを作りたいという思いから2016年にアプリ開発に着手し、2017年にゲームアプリ「hinadan」をリリースしました。これにより、Apple社CEOよりWWDC(アプリ開発者向けイベント)に特別招待されています。また、2017年より以下に挙げるような数々の政府主催会議などの構成員を務めています。
・一般社団法人メロウ俱楽部 理事
・熱中小学校教諭(一般社団法人熱中学園)
・公益社団法人 NEXT VISION理事
・岸田首相主催・デジタル田園都市国家構想実現会議構成員
・デジタル庁デジタル社会構想会議構成員
・総務省デジタル活用支援アドバイザリーボード構成員
加えて、2018年の国連社会開発委員会イベントや2020年の国連人口基金イベントなどで講演を行い、2021年には台湾政府デジタル担当の政務委員(IT担当大臣)であるオードリータンさんとのトークショーも行っています。
家族構成など
若宮さんは三兄弟の末っ子で、兄が2人います。結婚はしておらず、現在は独身で生活しているようです。
作成したアプリ
若宮さんが作成したiPhoneアプリとして有名なのが「Hinadan」です。ひな人形を正しい台座に配置して楽しむひな壇装飾アプリであり、AppleStoreで無料ダウンロードできます。正しい位置に置くと「ポン」と鼓の音が鳴り、台座のアイコンがひな人形に変わります。ご高齢の若宮さんが作成したアプリで遊べば、50代からでも新しいことを勉強するのは遅くないことが実感できるでしょう。
iPhoneアプリ「hinadan」をどうやって開発できるようになったか
それでは、若宮さんはどのようにしてiPhoneアプリ「hinadan」を開発できるようになったのでしょうか。ここでは、パソコン購入からアプリ開発までの経緯を見ていきます。
パソコン購入のきっかけ ー 母親の介護
若宮さんは定年退職後、母親の介護などで外出の機会が減り、友人などとの接点が減少していきます。そのような中で、若宮さんはパソコン通信を利用して友人とコミュニケーションを行うことを考えました。それがパソコン購入のきっかけとなっています。
パソコン通信とエクセルアート考案
パソコン購入後は、シニア世代向けの交流サイト「メロウ俱楽部」に参加。若宮さんは、エクセルの罫線機能やセルの塗りつぶし機能を活用して、しおりやブックカバーなどのデザインを作成する「エクセルアート」を考案しています。その斬新なアイデアが注目され、マイクロソフト社からは「エクセルの新しい使い方」との評価を受けました。
ゲームアプリ開発
1)開発のきっかけ
若宮さんがゲームアプリを開発しようと考えたきっかけは、当時のゲームアプリが若者向けのものが多く、シニアが楽しめるゲームアプリが少なかったためです。シニアでも楽しめるゲームアプリを作りたいと思い、2016年からゲームアプリの開発に着手しました。
2)プログラミング学習の方法
若宮さんは、株式会社テセラクトの代表取締役社長でゲームクリエイターでもある小泉勝志郎氏からプログラミングを教わりながら、学習を進めていきました。詳しい人に教えてもらいつつ、楽しみながら勉強していくことで着実にスキルアップしていったといえるでしょう。
3)hinadan開発とiPhoneアプリ公開
ゲームアプリ「hinadan」は、ひな人形を正しい台座に配置して楽しむひな壇装飾アプリです。App Storeで2017年2月より無料で配信されています。
4)hinadanユーザーはどうやって増えたか
hinadanは、80歳を過ぎた若宮さんが開発したという話題性の効果もあり、多くのユーザーに広まっていきました。App Storeでも600件以上のレビューが付いており、評価も4.4と好評となっています。
若宮正子さんの勉強法
50代から新しいことを勉強しようとしている方に向けて、若宮正子さんの勉強法をご紹介します。
極めようとしない
勉強というとストイックなイメージが付きまとい、途中で嫌になってしまう方も多いでしょう。若宮正子さんは純粋に楽しんだ結果、プログラミングを習得できたといいます。本格的に極めるつもりで勉強するのではなく、あくまで道楽として勉強することが大切とのことです。50代から新しいことに挑戦するときは、とにかく気軽に続けることを意識してみましょう。
参照元:
世界最高齢アプリ開発者・若宮正子 80代の勉強法(NIKKEI STYLE)
詳しい人に教えてもらう
若宮正子さんは60歳のとき、ネットで活動していたシニアグループに参加するためにパソコンを購入します。毎週末パソコンショップに通って、店員から基本操作やネット接続など、使い方を教えてもらっていました。グループに参加したあとは、ネット上の知人からホームページの作成方法や旅行記の公開方法を学んでいます。詳しい人に教えてもらうと、新しいことでも効率的に習得していけるようです。
参照元:
世界最高齢アプリ開発者・若宮正子 80代の勉強法(NIKKEI STYLE)
人に教える
若宮正子さんは、自分が学ぶだけでなく、人に教える活動にも積極的に取り組んでいます。たとえば、同世代の知人に頼まれてパソコン教室を自宅で開催していました。勉強したことを人に教えることは、学んだ知識をアウトプットすることです。脳は使う情報を長期記憶として残す性質を持つため、人に教えると学んだことが定着しやすくなります。新しいことを始めたら、家族や友達にも学んだことを積極的に話してみるとよいでしょう。
参照元:
世界最高齢アプリ開発者・若宮正子 80代の勉強法(NIKKEI STYLE)
脳にインプットしたことを記憶に定着させる「3大アウトプット」(DIAMOND online)
楽しめる工夫をする
若宮正子さんは、Excelをシニアに教えていました。しかし、Excelは難しそうに見えてしまうのか、高齢者の方が興味を持ちづらかったようです。そこで、Excelのマス目に色をつけてデザインを作成する「エクセルアート」を考案します。作成したデザインは洋服などにプリントできるため、ITに興味がない方でも身近なアートとして楽しめるというわけです。勉強をする意欲がわかないときは、勉強を楽しめる工夫をすることが大切だとわかります。
参照元:
70歳で自分史を書くのは早すぎる いかに自分のコンテンツを増やすかが大切(金融広報中央委員会)
人と交流する
若宮正子さんは、マイクロソフト主催の東北復興支援イベントに参加し、そのとき知り合ったIT企業の勧めによってiPhoneアプリの開発を決意したとのことです。人と交流することが新しいことを始めるきっかけになっています。そもそも勉強したいことが定まっていない方は、人との交流を増やして面白そうなことを探してみてはいかがでしょう。
参照元:
世界最高齢アプリ開発者・若宮正子 80代の勉強法(NIKKEI STYLE)
若宮正子さんの勉強法がわかる書籍
若宮正子さんは、自身の経験を活かしてITや学び方などに関する書籍を出版しています。若宮正子さんの勉強法を知るヒントが詰まっているので、気になった方はぜひ一読してみてください。
88歳、しあわせデジタル生活 もっと仲良くなるヒント、教えます
本書は「シニアこそ、デジタルと仲良くなりましょう」というメッセージ性が込められた若宮さんの最新の書籍です。シニア世代の多くはデジタルと聞くだけで嫌煙してしまいがちですが、そんなシニア世代こそデジタルが重要だと本書では説いています。
デジタルは生活の利便性を向上し、新しい知識を学ぶ助けになることから、実はシニアと相性が良いといえます。本書を読むことで、セカンドキャリアで新たな挑戦をする勇気をもらえるでしょう。
書籍名:88歳、しあわせデジタル生活 もっと仲良くなるヒント、教えます
著者:若宮正子
発行年:2023年
出版社:中央公論新社
老いてこそデジタルを。
インターネットやアプリ、スマホ、プログラミングなど、とにかくデジタルについて学んでみたい方におすすめなのが本書です。デジタルの概要、必要性、メリット、活用方法などを解説しています。少し厳しい先生に学ぶことや、学んだことをメモしないこと、怖がらず機器に触れてみることなど、デジタル分野の学習で大切なことを学べます。セキュリティに関する注意点にも触れているので、ITのトラブルが不安な方は目を通しておくとよいでしょう。
書籍名:老いてこそデジタルを。
著者:若宮正子
発行年:2019年
出版社:1万年堂出版
独学のススメ-頑張らない! 「定年後」の学び方10か条
本書は、若宮正子さんが提唱する定年後の学び方を10か条にまとめて紹介しています。「本から学ぼう」「教えることは学ぶこと」「飽きたらやめちゃえ」など、定年後の勉強に役立つ指針が学べます。やりたいことの見つけ方にも触れているので、何か新しいことに挑戦したい方や、趣味がなくて寂しく思っている方は、ぜひ一読してみてください。
書籍名:独学のススメ-頑張らない! 「定年後」の学び方10か条
著者:若宮正子
発行年:2019年
出版社:中央公論新社
明日のために、心にたくさん木を育てましょう
本書は、人生を楽しく生きるためのヒントが若宮さんの豊富な人生経験によって語られている書籍です。「明日のために心の中の木を育てると、いつの間にか枝葉を広げて大きくなっている。」このようなメッセージが本書には込められています。柔軟な発想で物事を考える若宮さんのメッセージを読むことで、人生の悩みや将来への不安を軽減するきっかけになるでしょう。
書籍名:明日のために、心にたくさん木を育てましょう
著者:若宮正子
発行年:2017年
出版社:ぴあ
60歳を過ぎると、人生はどんどんおもしろくなります。
本書は、60歳を過ぎてからの人生の楽しさについて若宮さんが前向きに語っている書籍です。Apple社CEOのティム・クック氏も本書に勇気づけられたと絶賛しています。「好奇心は歳を取らない」「ボケているくらいがちょうどいい」など、ユニークでバイタリティあふれる若宮さんの生き方に勇気づけられます。本書を読むことで、60歳を過ぎても歳を取っていくのを楽しみに感じられるようになるでしょう。
書籍名:60歳を過ぎると、人生はどんどんおもしろくなります。
著者:若宮正子
発行年:2017年
出版社:新潮社
花のパソコン道 パソコンでいきいきライフ―熟年さんのパソコン物語
本書は、60代からパソコンを購入した若宮さんが、パソコン入門者に向けてパソコン用語などをわかりやすく解説している書籍です。たとえば、「セットアップ」「ウィンドウズ」「ウイルス」「パスワード」といったパソコン用語について、日常の言葉を交えながらわかりやすく説明しています。また、パソコン上の基本的な操作について、なぜその操作を行うのかなどの背景にも丁寧に触れています。パソコンが苦手なシニア世代でも、本書を手に取ることでパソコンを使う楽しみを味わえるようになるでしょう。
書籍名:花のパソコン道 パソコンでいきいきライフ―熟年さんのパソコン物語
著者:若宮正子
発行年:2017年
出版社:インプレスR&D
パソコンでいきいきシルバーライフ
本書は、若宮さんがシルバー世代のために書いたパソコン活用の手引きとなる書籍です。約20年前に出版された書籍ですが、「シルバーのためのパソコン用語集」なども付いており、これからパソコンを習い始めたいシルバー世代に役立つ内容になっています。
著者:若宮正子
発行年:2002年
出版社:里文出版
熟年さんのパソコン物語
本書は、ユーモア小説の形式でパソコン入門者向けにパソコンの手引きを行っている書籍です。パソコン入門レベルの高齢者である主人公が、パソコンを通じて家族や地域社会、日本全国、海外の人々との交流を広げていくストーリーとなっており、楽しく読み進めることができます。
著者:若宮正子
発行年:1999年
出版社:里文出版
マーチャンがゆく 北欧編
本書は、主人公であるパワフル女性の「マーチャン」が、旅先で出会う北欧の人々と交流している様子が書かれた旅行記です。マーチャンの好奇心や知性あふれる視点で旅行の体験談がまとめられており、イラストや写真も付けられているため本書を読むことで旅行気分を味わえるでしょう。
著者:若宮正子
発行年:1998年
出版社:未来文化社
まとめ
今回は、若宮正子さんの経歴や勉強法、書籍をご紹介しました。若宮正子さんは、退職後の60代でパソコンを購入してから、アプリ開発や書籍出版など幅広く活躍しています。あらゆる物事に好奇心を持ち、年齢を気にせず何事もポジティブに捉える考え方は、多くのシニア世代にとって参考になるのではないでしょうか。
そんな若宮さんも、パソコン学習やアプリ開発の際は詳しい人に教えてもらって学習していました。一人で学習していると、わからないことがあったときに挫折してしまうリスクが高いです。その点、若宮正子さんがアプリを開発するまでに挫折しなかったのは、楽しむ気持ちを忘れないことに加え、素直に人に教えてもらう勉強法を貫いたからだといえるでしょう。
最近では、インターネットで気軽にスクールに申し込めるようになりました。オンラインツールを利用すれば、離れた場所にいる専門家から指導を受けることもできます。これから新しいことにチャレンジする50代の方は、若宮正子さんのように楽しむ気持ちを持ちつつ、人に教えてもらえる環境を探して勉強を始めてみてください。
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