【50代会社員】セカンドキャリア支援制度を解説。早期退職・希望退職制度との違いも。キャリアプラン作りからセカンドキャリアを考える
更新日:2024.09.02セカンドキャリアとは「第2の人生におけるキャリア(職業)」を意味する言葉です。もとはスポーツ選手が現役を退いた後のキャリアのことを指しましたが、転じて一般の人が定年や出産といった転機の後に築くキャリアのことを意味するようになりました。
特に近年、40~50代の社員を対象とした「セカンドキャリア支援制度」が、多くの企業で導入が検討されつつあります。人生100年と言われ、生涯で働く期間も延長する現代において、ターニングポイントであるミドル世代は、セカンドキャリアについて考えざるをえない現状があります。
ここでは50代会社員の方が希望のセカンドキャリアを見つけ、それを実現するためにどのような準備が必要かについて、見ていきたいと思います。
50代会社員ですが、これからのセカンドキャリアについて検討しています。セカンドキャリアの支援制度や準備について教えてください。
セカンドキャリア支援制度は元来、第二の人生におけるキャリアをスタートするためのサポートを目的とするものですが、一部の企業では早期退職制度、希望退職制度とセットで「新種のリストラ」と捉えられている現状もあります。セカンドキャリア支援制度を活用する際は、生涯を見据えた自分自身のライフプランやマネープラン、キャリアプランを事前にしっかりと計画することが重要です。有利な条件や人事の言うことだけを基に勢いだけで判断しないように注意してください。人によってゴールが異なるセカンドキャリアは、その準備も個々に千差万別です。現状や自分自身を分析したうえでキャリアの目標を設定し、着実に準備を進めていきましょう。
目次
結論
従業員の「第二の人生」をサポートするための制度として、企業のセカンドキャリア支援制度があります。割り増しで退職金をもらえるなどの好条件が注目されがちですが、その代わりに早期退職を迫られる「新種のリストラ」となっている側面もあるため、慎重に検討することが必要です。
セカンドキャリア支援制度を使うべき人
・退職後のマネープランをしっかりと計画できている人
・90歳くらいまでのセカンドキャリアプランをしっかりと持っている人
セカンドキャリア支援制度を使うべきでない人
・マネープランやセカンドキャリアプランをしっかりと計画できていない人
・有利な条件や人事の言う事に乗せられて、勢いだけで申し込みを考えている人
企業のセカンドキャリア支援制度とは
企業のセカンドキャリア支援制度とは、従業員の「第二の人生」であるセカンドキャリアのサポートを目的とした支援制度です。たとえば、キャリア開発研修や早期退職を適用した際の優遇制度などを設けて、従業員が退職した後も活躍できるよう支援しています。
早期退職優遇制度などは、本来よりも割り増しで退職金をもらえるなど、好条件となっていることも少なくありません。その反面、割り増し退職金とセットで退職を迫られる「新種のリストラ」となっている現状も一部で存在します。
早期退職優遇制度と希望退職者募集制度との違い
セカンドキャリア支援制度に関連して、「早期退職優遇制度」「希望退職者募集制度」といった用語がよく登場しますが、どのような違いがあるのでしょうか。
まず早期退職優遇制度は、従業員が自主的に早期退職を決断できる制度で、常に募集されていることが多いです。企業が優遇措置を与える代わりに、従業員の自己判断で早期退職を決断するため自己都合退職となります。
一方の希望退職者募集制度は、企業の経営状態が好ましくない場合に、一時的な人員整理として実施されることが多い制度です。企業が固定費削減のために行う施策であるため、会社都合退職となります。
新種のリストラ? セカンドキャリア支援制度
本来は社員が自主的にセカンドキャリアを考えるべきものですが、最近バブル世代の50代をターゲットにした早期退職制度や希望退職制度とセットでセカンドキャリア支援をおこなうことも多いのが現状です。 実際にコロナ禍による早期退職募集は増えています。
東京商工リサーチの調査によると、2021年に社員に対し早期・希望退職を募集した上場企業は80社以上、なかでも募集人数が1000人以上の企業は5社もあり、2年連続でリーマンショック後に次ぐ水準になりました。*1
また、ある大手メーカーでは、年功賃金や終身雇用を排除し、リストラによる人材の入れ替えを行う「労働移動」を行っていくケースも出てきているようです。*2
成果重視の賃金体系に移行して外部から優秀な人材を集める流れは、コロナ禍以降ますます加速していくことが想定されます。
企業の論理に流されてしまわないように、あくまでも「あなた自身」のセカンドキャリアをあらかじめ自主的によく考えておく必要があるでしょう。
*1 NHK解説委員室「コロナ禍で相次ぐ『早期退職募集』 キャリアチェンジの光と影」(時論公論)
*2 PRESIDENT Online 2021.04.23「会社が”善意”で社員のクビを切る「45歳のお荷物」を退場させる新しいリストラの手法」
企業のセカンドキャリア支援の事例
一方で、中高年人材に対して積極的にキャリア支援を行う会社もあります。 NECでは2018年から40代以上の全社員に対して、定期的なキャリアプログラムの受講を必須化しています。
同社の満45歳以上の社員を対象とする「セカンドキャリア支援制度」は、「各人の人生設計への主体的取組みを支援する」ことを目的としており、能力開発休暇(最長1年間の休暇。月収相当額が100%支給される)や、 能力開発研修費補助(研修受講・資格取得に必要な費用の一部を補助)などを盛り込んでいます。*3
同時にシニア人材向けの派遣・あっせん事業も予定されており、グループ会社への派遣や他社への転職などを支援することで、セカンドキャリアの選択肢を増やすとしています。*4
また、NEC社員のキャリア形成を支援する新会社「NECライフキャリア」を設立し、2020年10月から社員のキャリア形成やスキル開発を支援する施策を行っています。さらには2021年度以降は、これまで56歳であった管理職の役職定年を廃止しています。*5
他の事例では、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが「キャリア開発研修セカンドキャリア研修」として、キャリアステージごとの研修ラインナップを設けてセカンドキャリアを支援しています。たとえば、40代~定年までの「後期キャリア」を支援する施策として、セカンドキャリアの目標設定や活動計画作成、自己再発見などの研修を行っています。*6
*3『エルダー』2018年8月号 高齢・障害・求職者雇用支援機構
*4日経クロステック「NECが社員向けキャリア支援で新会社設立、シニア社員の人材派遣やあっせんも」
*5 IT Leaders 2020.10.09「EC、2021年度に役職定年を廃止、社員のキャリア形成支援の新会社「NECライフキャリア」を設立」
*6三菱UFJリサーチ&コンサルティング「キャリア開発研修セカンドキャリア研修」
実際の個人の事例
ここでひとつ、セカンドキャリア支援制度を使って企業を退職し、現在フリーランスとして活躍されている個人の方の事例をご紹介します。
X世代応援フリーライターとして現在活躍されている濱野ダティ氏は、もともと教育グループ企業に勤めており、健康上の理由により2022年にセカンドキャリア支援制度を活用して退職しました。
退職時は、2年分の年収割増制度と会社都合による希望退職が適用されたとのことです。セカンドキャリア支援制度は、人事部長との直接のやり取りによって進められ、面談や書類提出が行われました。ご本人いわくレアなケースとのことですが、年収割増制度や会社都合退職といった好条件と本人の退職希望がマッチしたひとつの事例だといえるでしょう。
*7 note 2022.04.17「誰も教えてくれない「セカンドキャリア支援制度」「転身応援制度」の実情」
セカンドキャリア支援制度を使うべき人と使うべきではない人とは
ここでは、セカンドキャリア支援制度を使うべき人と使うべきではない人それぞれの特徴について解説します。
使うべき人
まず、セカンドキャリア支援制度を使うべき人は、マネープランの裏付けを基に90歳くらいまでのセカンドキャリアプランをしっかりと持っている人です。退職後も充実した生活を続けていくためには、長期的なキャリアプランとお金の準備が重要となります。
早期退職に向いている人の特徴については、以下の関連記事も合わせてご確認ください。
関連記事:
「50代早期退職のメリット:早いセカンドキャリアのスタートが年収ダウン克服への早道」
使うべきではない人
反対に、セカンドキャリア支援制度を使うべきではない人は、事前の計画なしに「なんとかなるだろう」という勢いだけで制度への申し込みを考えてしまう人です。
マネープランの裏付けを基に90歳くらいまでのセカンドキャリアプランをしっかりと持っていないのに、有利な条件や人事の言う事に乗せられてしまう事態は避けるべきです。セカンドキャリア支援制度を利用する前に、あなた自身のキャリプランやマネープランをしっかりと作り上げていくようにしましょう。
セカンドキャリア設計に関するおすすめの記事
セカンドキャリア設計を行う際は、以下に挙げる記事も参考になりますのでご確認ください。
1)ライフプランに関する記事
セカンドキャリアを設計する際は、まずは土台となるライフプランを考えることが大切です。50代からのライフプランニングをどのように行えばよいのかわからないという方は、以下の記事でライフプランニングの例を見てイメージを具体化していきましょう。
ライフプランニングを調べると若い年代の方向けの例示が多くあります。本ブログの読者は50代の方が多い…
2)マネープランに関する記事
ライフプランに加えて、生活していくためにはマネープランの設計も欠かせません。割増退職金をもらって早期退職しても生活していけるか不安な方は、以下の記事で早期退職の判断ポイントについて解説していますので参考にしてみてください。
参考記事:
DIAMOND online 2023.06.12「「割増退職金をもらって早期退職していいか」が5分で分かる方法とは?【書籍オンライン編集部セレクション】」
また、マネープランの作り方については、以下の記事もご参照ください。
マネープランは自分でも作ることができます。作り始める前に、マネープランとは何か、どんな考えをもって…
3)キャリアプランに関する記事
ライフプランとマネープランの計画ができたら、キャリアプランの設計も行っていきます。これまで同じ会社で長く働いてきた50代サラリーマンにとっては、今後のキャリアプランが見えなくて不安という方もいるでしょう。
以下の関連記事では、キャリアプランの不安を解消する方法やシニア年代で活躍し続けるために大切なことについて解説していますので、参考にしてみてください。
変わりゆく社会状況や経済状況の中で将来のキャリアに不安を持っている中高年ミドル層が多くいます。不安…
50代からのキャリアプランの書き方は、20代や30代向けの書き方とは異なります。この差を理解しつつ…
セカンドキャリアに向けて~50代で始めるべき準備とは
では、セカンドキャリアのために、50代で始めるべき準備とはどのようなものでしょうか。これから準備を始める方のために、3つの段階に分けて順に見ていきましょう。
①まずは現状&自己分析
当たり前のことですが、個々の人がもつバックグラウンドは千差万別です。経済的な背景や家族構成、志向・好みなど、キャリアに影響を与える要素もその優先順位も様々。だからこそしっかりと自己分析をした上で、納得できる「オンリーワン」のキャリアをデザインすることが大切です。
自分の内面を見つめ直すと同時に、「置かれている状況の中での自分」つまり変化する社会への自らの適応力を把握する必要もあります。そのためには「社会が今、何を必要としているのか」を客観的に分析し、それに合致する自らの経験やスキルを明らかにしていく作業が求められます。
セカンドキャリアに向けた現状&自己分析とは、つまり、自分のwill (何がしたいのか)とcan(何ができるのか)を棚卸することなのです。
この棚卸の際に、自分自身のキャリア志向や自分に向いているキャリアのタイプ・働き方などを診断してくれるオンラインの「キャリア診断サービス」を利用してみるのもいいでしょう。客観的に自分を見つめ直すよい材料になります。
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②セカンドキャリアのデザイン
キャリアに望む条件は人それぞれですから、先ほどの自己&現状分析をもとに項目ごとに自らの優先順位を決めていき、オリジナルのデザインシートを作成してみましょう。その際に検討すべき項目は、以下のようなものです。
・収入はいくら必要か。
・就業形態は?:社員、フリーランス、起業、ダブルワーク
・勤務場所 ・勤務時間
・仕事内容は?:現在の職種を極める、新しい分野に挑戦する
・自分のキャリア・アンカー(キャリア上これだけは譲れないという点)は?
これから20年以上かけて実行していくためのキャリアデザインですから、将来的な目標を項目ごとに設定し、目標達成には何をどう変えていくべきかを明確にすることが大切です。
ITやプログラミング×キャリアデザインについて知りたい人は無料e-Book「セカンドキャリアデザインフレームワーク」がおすすめです。セカンドキャリアのゴール設定(目標月収など)や重視したいスタイル(在宅、フリーランスなど)を決めた上で、勉強内容とそのゴールを設定することができます。
また、もっと具体的に個別にキャリアに関するアドバイスが欲しい、という方は、当スクールのオンライン無料カウンセリングにお申し込みください。
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③プラスアルファの投資(学び直し)を始める
セカンドキャリアのイメージが固まったら、次は将来のキャリアへの投資(学び直し)を始めましょう。
人生を再設計し新しいキャリアを始める際には、多かれ少なかれ何らかの「学び直し」が必要となります。支援制度などを上手く活用しながら、自分に必要なスキルや知識向上を目指しましょう。
【何を学び直すか?】
・専門知識やスキルの補強:市場において自らの強味を発揮するために、今までに養った経験や知識
・スキルを更新する。
・挑戦のための備え:これから挑戦しようとする分野の知識
・技術を習得する。新しい資格を取得する。
・現代ビジネスの基礎を学びなおす:オンラインでのコミュニケーション、データのやりとり、ビジネストレンドの把握など。
【急激なビジネスのIT化への対策は必須】
どのようなセカンドキャリアを選択するにせよ、これからの時代に汎用的なスキルとして看過できないのがITのスキルです。コロナ禍でリモートでの働き方が定着し、オンラインツールを使用したコミュニケーションやクラウド上でのデータのやりとりは、できるのが当たり前の前提となっています。
また、各企業がDX化を推進している中、DXを担う人材は不足しています。今の経験にDXの知識を掛け合わせれば、キャリアチェンジの際に大きな強みとなるでしょう。
【おすすめはIT&プログラミング】
学び直しの中で、速効性と今までの経験との相乗効果が期待できるITやプログラミングは 最も有力な選択肢のうちの一つです。 特に、最近注目されている業務効率化や自動化のスキルである エクセルVBA、PythonやRPA、ノーコードツールなどの勉強が特におすすめです。
また見落とされがちですが、「自分で仕事を獲得するスキル」や「自分で案件を探して目利きをするスキル」 は会社員のあなたはほぼ未経験でゼロの状態であることを強く自覚して、それらの習得を会社員のうちからやっておく必要があります。
人脈をつくる
これからのセカンドキャリアで転職という選択をする場合、今の職場で育んだ「会社外の」人脈が良い選択につながる可能性があります。実際、社員の紹介や推薦による「リファラル採用」は、企業と応募者のミスマッチが少なく定着率も高いとして、様々な企業で導入されています。定年を機にシニアが転職する際には、それまで培った社外の人脈が命綱となる、という指摘もあります。*
転職のためだけでなく、第2の人生における自分の居場所をつくるためにも、会社以外の新しいネットワークを構築し始めることはとても大切です。
・趣味のコミュニティ
・地域のコミュニティ
・学生時代の友人
・社会貢献・ボランティア活動のコミュニティ
・スクール、研修、イベントでの知人
といった会社外の人とのつながりは、新しい発見や喜びを生み出し、セカンドキャリアにより多くの選択肢を与えてくれるでしょう。
心から楽しめることをつくる
セカンドキャリアを充実したものにするには、キャリアへのモチベーションを保つことが大切です。仕事への意欲を保ち続ける方法として「自分をワクワクさせること」をキャリアの中に組み込んでいくという考え方があります。
趣味を仕事にする、仕事で養った技術を用いて社会貢献に取り組むなど、心から楽しめることがあれば、それをセカンドキャリアの中に盛り込むこともできます。
まとめ
50代は、来るべき定年を視野に入れながらセカンドキャリアを構築していく時期です。企業のセカンドキャリア支援制度の活用を考えている方は、まずは制度を使う前に自身のセカンドキャリアプランをしっかりと計画するようにしましょう。
これからのキャリアを充実させるためには、今までのキャリア(経験、能力)と自分自身を総点検し、新たにキャリアをデザインし直した上で、そのための準備を進めていくことが必要です。
また、キャリアプランだけでなく、人生100年を見据えたライフプランやマネープランについてもしっかりと計画していきましょう。
50代会社員のセカンドキャリアのためのプログラミングスクール
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大手SIerおよび大手メーカーの情報システム部門で実務経験を積み、現在はITライターとして独立。DX・IT・Webマーケティング分野を中心に多数の記事やコラムを執筆。保有資格:ITストラテジスト、プロジェクトマネージャー、応用情報技術者など。