パソコンを駆使する60代に。シニア世代が身につけるべきIT・デジタル知識とは。
更新日:2024.09.07目次
日本の60代はデジタルに疎い?
OECD(経済協力開発機構)が成人のスキルに関する調査を行っています。それによると、60~65歳日本人の読解力や数的思考力はOECD諸国に比べ高いレベルにあるのですが、ITによる問題解決能力に関しては、OECD諸国の平均より下回るという少し衝撃的な結果が出ています。*1
60代は、社会人になってからパソコンが普及した世代です。日々進歩する社内業務のデジタル化も、理解があいまいなまま何となくやり過ごして定年間際まできてしまったという方も少なくありません。また、ラインやツイッターといったSNSメディアを携帯で日常的に利用してきた若者とは違い、普段の生活でこういったメディアを使いこなしている60代は少数派です。携帯やパソコンの使用そのものに苦手意識を持つ人も少なくありません。
しかしデジタル化がさらに加速する今、「できない」「使わない」では済まない現状があります。これからは、安全にIT・デジタル技術を使うためのノウハウがより必要とされるでしょう。
シニアが今、身につけるべきIT・デジタル知識とは
次に、シニア世代が身につけるべきITやデジタルに関する知識を整理してみたいと思います。
デジタル化する社会に対応するためのスキル
今や世代を問わず,社会生活でのインターネット利用が当たり前となりました。この度のコロナワクチン接種の申し込みといった公共サービスの申し込みも、オンラインに移行しています。金融や交通などインフラのデジタル化やIoT*の普及も急激に進んでおり、それを日常的に使いこなす一定のスキルが必要となっています。
* 「あらゆるモノをインターネット(あるいはネットワーク)に接続する技術であり、日本語ではモノのインターネットと訳されます」(NTTのITトレンド用語https://www.ntt.com/bizon/glossary/e-i/iot.htmlより)
ネット上でのアカウント管理
ネットショッピングはもちろん、各種利用明細のペーパーレス化にともない、クレジットカードや電気・水道料金などでもオンラインのアカウント開設が必要となってきています。アカウントを安全に管理するためには、パスワードを適切に設定・管理することが求められます。インターネットのセキュリティソフト会社のトレンドマイクロは自社サイト*2で
・パスワードの使い回しをしない
・第三者に推測されにくい複雑なパスワードを設定する
・二要素認証などセキュリティ強化できる認証を利用する
・パスワード管理ソフトを上手に利用する
といった方法を提案しています。
電子マネー
消費税増税時の「キャッシュレス・消費者還元事業」を機に、電子マネーの利用率も年々高まっています。電子マネーそのものの種類も増え,コンビニなど身近に使える場所が増えました。その便利さやお得さの一方でリスクも存在します。例えば
・お金を使ったという意識が希薄で,使いすぎてしまう
・システム障害などで使えなくなる
・購買情報を収集される
・不正利用や詐欺
などが挙げられます。使わなければこれらのリスクはゼロになりますが,メリットを享受することもできません。今後社会のキャッシュレス化が加速することを考えれば,これらのリスクを知り上手に回避しながら利用していく術が必要となるでしょう。
SNSにおけるネットリテラシー
ツイッターやフェイスブックといったSNSは,見る側・発進側両方で以下のようなことに注意が必要です。
・個人情報:投稿する際,知らないうちに個人情報が公開されることがある。写真の映り込みから住所を特定されることも。設定で公開する相手を限定する(いわゆる「鍵アカウント」)などの防衛対策を。
・誹謗中傷:悪意のある書き込みが刑事告発される例も。
・肖像権や著作権の侵害:許可なく他人の写真や作品を使用しない。
・フェイクニュース:SNSは誰でも投稿できる分,必ずしも正しい情報とは限らない。情報元の確認を習慣づけたい。
・フィッシング詐欺:あるサイトに誘導して詐欺を行うことを目的にしたSNSアカウントもある。ツイート数やフォロワーが少ないなど「なりすまし」を判別するポイントを知っておきたい。
銀行口座などのオンライン管理
大手銀行が次々と取引のデジタル化に舵を切っています。例えば三井住友銀行は新規口座開設時、紙の通帳発行が有料となるほか、インターネット取引「SMBCダイレクト」を利用しないと手数料が必要となりました。このたびのコロナ禍で銀行のオンライン取引は増加、銀行のスマホアプリのダウンロードも増えたといいます。これからはシニアであってもオンライン上で口座を開設し、安全に取引の管理ができる能力が必要とされるでしょう。
キャリアに必要な知識
人生100年時代に入り、収入面でも生きがいという面でも「元気なうちは働き続けたい」と考えるシニアが増えました。
「企業特殊能力」という言葉があります。その企業の中でしか通用しない特殊な能力のことで、例えばその会社が製造している商品知識や特有の人事制度などがそれにあたります。シニア世代が会社で培ってきたこの手の能力は、今いる会社の中でこそ役立ちますが、転職の際には評価の対象にはなりにくいものです。定年後の転職を考えるのであれば、他の会社でも通用する汎用性の高いスキル…いわゆる「一般的能力」を身につけることが必要です。
ITやデジタルに限っていえば、以下のようなスキルです。
・基本的なパソコン操作:PCの管理、ファイル保存、アプリのダウンロード、インターネットへの接続など
・必須ビジネスソフトの利用:ワード、エクセル、パワーポイント
・クラウドストレージなどで行う情報の安全でスムーズなやりとり
・コミュニケーションツールの利用:zoomやslackなど
・共同作業ツールの利用:google docsや spreadsheetsなど
プログラミングやWebデザイン、Webマーケティングなどのスキル習得は、キャリアアップや収入アップを目指す人におすすめです。最初に述べたように、IT・インターネットに関する知識をもつシニアは想像以上に少なく、知識をもつことで再就職の際に他の候補者との差別化ができるからです。
またウェブサイトやブログを開設し、インターネット上でファンを獲得することによって収入を得るという方法もあります。収入としては少額かもしれませんが、自分の好きなことや得意なことをウェブ上で表現する楽しさや仲間と繋がっていく喜びには、お金に代えがたいものがあります。
スクール選びのポイント
巷にはパソコンスクール、Webデザインスクール、プログラミングスクールなどが多数存在します。そんな中で自分の学びたいことが学べるスクールを探し出すのは至難の業かもしれません。なぜなら、メールを打つこともできない人もいれば、仕事でexcel やwordだけは使っていたという人まで、パソコン・インターネット技術のレベルは人それぞれだからです。また、
・パソコンの操作から学びたい
・インターネットやブラウザの使い方を学びたい
・word や excelなどがもっと使えるようになりたい
・プログラミングに挑戦したい
など、学びたい内容は個人により千差万別です。ですから、スクールを選ぶ際には、
「自分のレベルや要望に合った学びができるか否か」が重要です。
また、これからデジタル・ITスキルを習得したいというシニアの方におすすめしたいのは、「とにかく使って慣れる」ということです。パソコンやインターネットというのは、あくまでも作業を効率化したり人とコミュニケーションするための「道具」です。まずはパソコンを使って文章を書いてみる、保存してみる、インターネットを閲覧してみる、フェイスブックで自分のアカウントを作ってみる、ブログを書いてみる…など、まず身近な目標を定め自分の出来そうなことから挑戦する環境作りが必要です。
ビジネススキルとして、プログラミングやWebデザインなどを学ぶ際にも、「参考書をまるごと一冊」「基礎から一歩ずつ」という方法は、効率的とは言えません。もちろん基礎となる仕組みを知ることは必要ですが、まずはざっくりと理解をした上で、自分で実際に手を動かしてやってみることが上達への近道と言えます。
*TechGardenSchoolでは個別指導(マンツーマン)で、個人の要望・レベルに合った内容を丁寧に指導いたします。分からないことをクリアにし、ピンポイントで解決していくことで効果的に学ぶことができます。
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参考・引用
*1 国際成人力調査(Programme for the International Assessment of Adult Competencies : PIAAC)第1回調査2011年
*2 2020.10.20 「インターネットサービスのアカウントを安全に管理するための要点とは」https://is702.jp/special/3755/
内閣府「高齢社会白書」令和2年版
1967年生まれ。慶應義塾大学理工学部大学院修士課程卒。英国国立レスター大学MBA取得。2011年「起業家のためのプログラミング教室」Club86 Startup School(現TechGardenSchool)設立 2017年「中高年のためのプログラミング教室」開始 著書「図解 50代からのプログラミング –未開の能力を発掘♪」「教えて♪ プログラミング」など