50代からのキャリア事例。厚生労働省が選定した事例を見ながら考えるキャリアパス

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50代からのキャリア事例。厚生労働省が選定した事例を見ながら考えるキャリアパス

シニアのキャリアとは

多くの企業のキャリアパスは寿命の伸長やデジタル化、アフターコロナの経済環境の変化など伴い、変更を迫られています。これからキャリアパスがどう変化するか、個人としては先回りしてどう対応すべきか解説します。

50代になりキャリアパスを見直してみましたが、見通しが良くありません。定年引上げがありましたが60歳以降の働き方も不透明です。自身のキャリアパスを考えるきっかけとなる事例はありますか。


定年延長やビジネス環境の変化によって、これまでのキャリアパスは通用しなくなりました。一方、企業のキャリアパス制度の変更はまだ追いついていません。これからの時代に必要な知識や新しく登場するパスを予測し、主体的にキャリアパスを構築していく積極性が必要です。

キャリアパスとは

キャリアパスの意味するものや、企業内でどのように導入されているか事例からをしっかり知ることで、自身のキャリアパス検討に活かしましょう。

キャリアプランとキャリアパスの違い

キャリアを語るときにキャリアパスとキャリアプランという二つの言葉が登場します。似ている言葉ですが、それぞれ指し示すものが異なっています。

まずキャリアパスについてですが、これは一つの企業の中で、どのような部署や職務を経験し、どのような人材となっていくのかを計画するものです。各社員が目標とする役職等に対し、どのような部署での経験やスキルが必要かを示したものです。

次にキャリアプランについてですが、これは各個人のキャリアの設計であり、必ずしも一企業の中に閉じた話ではありません。転職や独立、一回大学に戻って学びなおすなど、自身の人生設計に基づいて職業に関する計画をするものです。

企業がキャリアパスを整備する理由

キャリアパスを導入している企業も多いですが、その理由は何でしょうか。

一つは社員に進むべき道筋を示し、モチベーションを保ったり、中途退職を防ぐ目的があります。日本では新卒一括採用で複数部署を配置換えによって経験するゼネラリスト育成が基本でした。しかし多種多様な職務を経験する一方で、自身が将来どのポストでどのような仕事ができるのか見通しが立たなかったり、そこに向けた自己研鑽ができないことも課題でした。そこで、社内の昇進に関する道筋を社員に明示することで、個々の目標を明確にし、モチベーション高く頑張ってもらいたいという意図があります。

また、専門スキルをもった社員の適材適所にもつながるため、企業の競争力アップも期待されています。また、採用時のミスマッチを防ぐことも目的の一つです。新卒採用や中途採用には多くの費用がかかります。せっかく採用しても、個人のキャリアプランと会社の方針の不一致が判明し早々に退職に至るケースも少なくありません。これは企業にとって大きなロスとなります。そのため、採用面接の段階でキャリアパスを明示することで、ミスマッチを事前に防ぐことに繋げます。

キャリアパスの事例

キャリアパス制度導入の好事例は厚生労働省が2012年~2015年まで『キャリア支援企業好事例集』としてまとめていました。

その中から一つご紹介します。マンション、ビルなどにおける衛生設備や空調設備などの設備工事を行っている株式会社千代田設備では、社員一人ひとりに生き生きとやる気をもって働いてもらうために「社員成長制度」と名付けた仕組みを導入しました。同制度ではまず会社が求める社員像と基準、そして処遇のルールをオープンにし、社員一人ひとりが自ら積極的に目標に取り組んで成長できる環境を整えました。

次に、具体的な成長ステージとステップアップの道筋のイメージを示し、ライフステージと併せて自らの人生設計づくりを促しています。各ステップの報酬も明示することで、より具体的にキャリアパスを検討できるようになっています。

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経済環境の変化により従来のキャリアパスは通用しない

日本の各企業においてこれまでキャリアパスの導入が進んできましたが、2022年現在、社会環境の変化により既存のキャリアパスは転換点を迎えています。しかし、企業のキャリアパス制度変更は追いついていないのが実情です。そのため、変化を早めにキャッチし、自分自身のキャリアパスを見つめなおすことが必要です。

定年引上げによる既存のキャリアパスの矛盾

これまで多くの企業の定年は60歳前後に設定されていました。しかし、政府は定年の引き上げを進めています。つまり、現在のキャリアパスでは既に終わっているその先に、キャリアが続いていく状況となっています。終着点が異なればもちろんその成長曲線や道筋も異なってきます。

特に、体力面が落ちてくるシニア年代の働き方を考慮しつつ、経験やスキルを還元できるキャリアパスの設計が必要になってきます。

ビジネスの変化による新しいキャリアパスの登場
第四次産業革命と言われる現代では、情報技術の発達により、技術の変革スピードが指数関数的に早くなっています。ビジネスの現場でも、デジタル化、AI導入、そしてそれらにともなうDX(デジタル・トランスフォーメーション)が進んでいます。

大手企業を中心にDX推進室やAI企画部などが新設されたり、プロジェクトベースで部署横断的なチームが編成されています。これらは既存のキャリアパスにはない、新しい部署・役職となります。またDXの結果、ビジネスの在り方が変化すれば、ここでも当然新しいキャリアパスが登場します。

今求められている技術や知識を見極め、自身のキャリアパスに落とし込んでください。

キャリアパス モデル事例:DX人材を目指す

さて、それでは実際どのようなキャリアパスが考えられるのか、シミュレーションしてみましょう。

産業機器のメーカーに勤めるAさんを主人公とします。
Aさんはこれまで自社で製造した機器の営業を行ってきました。長い間顧客との関係を構築してきたので、既存のコネクションには自信を持っています。50代に入り、そろそろ営業部長や本部長へ出世し、60歳で定年する予定でした。しかし大きな変化が訪れます。まず、Aさんの会社では法律に従い定年が65歳に引き上げられました。また、コロナの影響で客先訪問がしにくくなったこと、全社的にデジタル化を進めたことで、顧客との関係性に変化が現れます。このままだと自分の営業力も発揮できず、60歳以降のキャリアも不透明です。

そこで、会社がデジタル化を進めていることもあり、プログラミングやAIについて勉強することにしました。勉強していくうちに、これまでの営業現場で得た経験や知識と、AIについての知識を組み合わせることで、顧客の課題を解決するAI搭載型の機器を企画できるのではないかとひらめきました。自分自身でAIを開発することは難しいけれど、長年の顧客との折衝で顧客の課題は知り尽くしています。現在の製品では解決しきれないところも、AIを導入すれば解決する道筋が見つかりました。AさんはAIを搭載した機器を開発し顧客へ販売することを会社へ提案。会社も売上増加が見込めることからAさんの提案を承諾。晴れてAさんはAIを企画するプランナーとして新設されたポジションへ栄転。

以上はあくまでうまく進んだ例ですが、今後このような成功モデルが増えてくるのは十分に考えられます。ポイントとなるのはこれまでの経験や知識に新しく学んだ知識を掛け合わせ、自らが主体となってこれまでのキャリアパスにはなかった新しいポジションやルートを目指すということです。

まとめ

定年延長やビジネス環境の変化によって、これまでのキャリアパスは通用しなくなりました。一方、企業のキャリアパス制度の変更はまだ追いついていません。

これからの時代に必要な知識や新しく登場するパスを予測し、主体的にキャリアパスを構築していく積極性が必要です。

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