50代早期退職のメリット:早いセカンドキャリアのスタートが年収ダウン克服への早道
更新日:2024.04.14ここ数年、一度入社したら定年まで勤めあげるのが一般的という風潮が変わり、定年を迎える前に会社を去る人が増加しています。また『早期退職』と言う言葉も以前は役職定年の末の出向やリストラなど、どちらかというとネガティブなイメージがありましたが、現在は自ら進んで早期退職を選ぶ人も多くなりました。
一体どんな人が早期退職の道を選んでいるのか。また早期退職した後はどんなセカンドライフを送っているのでしょうか?本記事では早期退職の概要からメリット・デメリット、早期退職が活かせる人の特徴などを解説します。
大手企業における早期退職募集のニュースを見ました。自分の会社でも将来起こり得ると考えていますが、早期退職にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
早期退職は新しいキャリアにチャレンジするきっかけであり、定年後まで踏まえて考えると早めに動き出せる好機とも言えます。メリット・デメリットがあり、メリットを最大限享受できるタイプの人が向いています。
目次
結論:50代で早期退職するメリットは早期にセカンドキャリアをスタートできること。ただし、マネープランを始め事前の設計が大切
早期退職は、退職金の上乗せや新しい仕事・起業へのチャレンジ、プライベートを含めた生活の見直しといったメリットがあります。ただし、勢いだけで早期退職を決断するのは避けるべきです。早期退職で失敗しないためには、しっかりとライフプランやマネープランを計画したうえで、セカンドキャリア設計を行うことが重要です。
早期退職と他制度との違い
はじめに、早期退職の概要や他の制度との違いなどについて解説します。
早期退職とは
早期退職とは、定年に達しない年齢であるものの、企業が募集などを通して退職者を募り、応募した社員等を会社都合の形式で退職させることです。企業等が早期退職をさせる場面としては、業績の悪化にともなう経営改善のため、人員や事業を見直す場合が多いです。
ただし、一定の年齢や勤続年数を満たす社員に対しあらかじめ制度として早期退職を用意しておくケースもあります。
セカンドキャリア支援制度との違い
セカンドキャリア支援制度とは、従業員の「第二の人生」であるセカンドキャリアのサポートを目的とした支援制度です。たとえば、キャリア開発研修や早期退職を適用した際の優遇制度などを設けて、従業員が退職した後も活躍できるよう支援しています。
早期退職と似ていますが、セカンドキャリア支援制度のほうがより幅広い意味合いを持った制度だといえるでしょう。
希望退職制度との違い
希望退職制度は、就業者が自分の意志で退職を選択できる制度です。定年よりも早く辞めるという点では早期退職と同じですが、早期退職が恒常的な募集であることが多いのに対し、希望退職制度は期間限定の募集である点で違いがあります。
選択定年制との違い
選択定年制は、自分の意思で定年の時期を設定し、その年齢に達したときに早期退職ができる制度です。選択定年制の場合は、会社都合ではなく自己都合の退職となる点で早期退職との違いがあります。
早期退職の近年の動向
従来は、早期退職は業績悪化に悩む企業が導入することが一般的でした。しかし、最近では業績が良くても早期退職制度を導入する企業も増加しています。その大きな理由は、DX推進に伴うIT投資の活性化などです。なるべく業績が良いうちに将来の先行投資を行い、それに伴い既存事業の見直しや社内人材の再配置などに取り組む企業が増えているのです。
その一環として、赤字でなくても早期退職制度を導入する企業が増加しています。
民間における早期退職
業績悪化などに伴い早期退職を募集することがあります。富士通が2,850人の大規模な募集をしたり、オンワードホールディングスや小田急電鉄の百貨店部門などコロナ後の生活の変化で売り上げが減少した業界なども目立ちます。早期退職の場合、退職金が上乗せされるることが一般的です。
そのため、企業の会計としては大きな特別損失が計上されますが、それでも将来の経営体制を考慮し、人員削減に動かざるを得ない事情も垣間見えます。
公務員における早期退職
公務員にも早期退職制度があり、国家公務員の場合は応募認定退職という制度があります。
これは平成25年11月1日から導入されたもので、内閣人事局の記載によれば、「職員の年齢別構成の適正化を通じた組織活力の維持等を目的として、定年前15年以内で勤続期間20年以上の職員(定年前6月以内の者を除く。)を対象に、透明性の確保された早期退職募集制度を創設」したとされています。
早期退職のメリットについて
早期退職にはいくつかのメリットがあります。ここでは3つのメリットをご紹介します。
退職金が上乗せされる
2018年に厚生労働省が行った「就労条件総合調査」を見ると、早期退職の場合、退職金の平均額は、2,326万円(45歳以上かつ勤続20年以上)となっています。定年よりも10〜15年早く、同等以上の退職金が受け取れる計算となります。
上乗せされる大きさによって早期退職の応募者も増える傾向がありますので、企業側が積極的に早期退職を実施したい場合ほど上乗せ額が大きくなります。
新しい仕事や起業へのチャンスとなる
早期退職に応募する場合、その後の人生をどう生きていくかしっかりと考えて応募することとなります。また、企業側もキャリア形成の支援をセットで早期退職の募集を行うこともあります。定年までその会社で勤め上げようと考えていると、人はなかなか定年後のキャリアについて考えるのを先送りにしてしまいがちです。
40代〜50代で将来について考え、上乗せされた退職金という軍資金がある状態は新しいチャレンジをするのに良い機会となります。
生活を見直し、家族や趣味に使う時間を増やすことも
これまで企業人として一生懸命頑張っていた人でも、早期退職はそれまでの生活を見直す良い機会となります。多少年収は下がってもゆとりのある仕事を選び、家族と過ごす時間や趣味の時間を増やすことも可能です。東京を離れ、地方で再出発するケースもあるでしょう。
早期退職のデメリットについて
早期退職には上記のようなメリットもありますが、もちろんデメリットもあります。デメリットを4つご紹介します。
50代の転職は想像以上に時間がかかる
早期退職に応じるのは50代の方が多いです。今では中高年・ミドルの転職も多く見られるようになってきましたが、まだまだこれから伸びていく段階です。そのため、新しい仕事を探そうと思った時に、そもそも求人が少なかったり、自分に合った求人がなかなか見つからないということがあります。
加えて、これまで一度も転職経験のない50代も多く、転職活動に不慣れであることから余計に時間がかかるケースも考えられます。さらに50代からの転職は、よほどの高度な専門スキルを持つ人材でなければ今までのような収入レベルを維持することは難しいため、条件にこだわるとますます転職が難航してしまうでしょう。
早期退職を募集する企業側が新しい職場の斡旋を行う場合もありますが、必ずしも自分の経験やスキルに合った企業ばかりではなく、なかなか決まらないということもあります。 50代の転職には6ヶ月から1年くらい見ておくべきだというコンサルタントの方もいらっしゃるほどです。
50代の転職は年収ダウンのケースが多い
前述のように50代の転職が想像以上に厳しいという現実があり、結果として年収がダウンするケースのほうが多いと言われています。早期退職により退職金は大幅に割り増しされますが、トータルでは今の会社にとどまったほうが総収入が多くなるケースも十分ありえますので、転職できるまでの時間と年収の予測をしっかりと検討することをおすすめいたします。
たとえば、現在の会社で管理職に就いている人でも、肩書きがあるからといって簡単に再就職できるとは限りません。次の職場がなかなか見つからない場合、無職期間が長くなり、ますます再就職が困難になる悪循環に陥る可能性もあります。
さらにその間の生活は貯金を切り崩す必要も出てくるため、退職金が割り増しされるからといって安心はできません。
年金の受給額が減る場合がある
早期退職をすることで、年金の受給額が減る場合がある点もデメリットです。年金は、主に老齢基礎年金と老齢厚生年金に分かれます。そして老齢厚生年金は、会社員や公務員として働いた期間や給料によって金額が決まります。
たとえば55歳で早期退職する場合、定年の60歳よりも5年早く退職するため、5年分の年金支給額が減少します。人にもよりますが、5年早く退職することで年額10万円以上減少するケースも考えられます。
新しい環境に馴染むのに時間がかかる人も
早期退職のメリットで記載した新しいチャレンジや地方への移住など、変化を楽しめる人にとってはポジティブに作用しますが、そうでない人にとってはストレスになるかもしれません。働く環境も大手企業から中小企業に移ったり、ご自身で起業した場合は勝手が違うことが多くあり、慣れるまでは戸惑いもみられるでしょう。
企業にとっての早期退職制度のメリット
企業にとっての早期退職制度の大きなメリットとして、人件費の削減が挙げられます。割り増しの退職金を払うことで一時的な支出は増加するものの、その後の数年間分の固定費としてかかる人件費を削減することが可能です。
たとえば、退職金を割り増しで1,000万円多く支払ったとしても、年収800万円の社員の人件費を5年間(4,000万円)カットできるのであれば、大幅な人件費の削減につながります。他にも、重要なポストを中堅社員に入れ替えて組織の若返りを図ったりすることなどもメリットとなるでしょう。
企業にとっての早期退職制度のデメリット
一方で、企業にとっての早期退職制度のデメリットは、本来退職してほしくない優秀な人材も離れてしまう場合がある点です。早期退職によって割り増しの退職金をもらいつつ、より好条件を提示してくれる企業に転職する人材も出てくる可能性があります。
たとえば、将来の会社のリーダーとして期待されていた40代後半の優秀な社員が、割り増しの退職金をもらって早期退職し、別の企業に移るケースも考えられます。
いくら必要?55歳で早期退職するのに必要な資金とは
55歳での早期退職を考える場合、まず「退職後に必要となる生活費など(支出)」と「退職金や将来受け取る年金の受給額(収入)」を洗い出して、準備すべき資金を計算しましょう。支出については、55歳で退職後、年金受給開始(原則として65歳)までの10年間の生活費をまかなう資金が必要です。
また、再就職を希望しながらもすぐに叶わない場合や早期退職による年金の減額、老後の医療費・家族の介護など、不測の事態に備える資金も考慮しましょう。
55歳で早期退職する場合の必要な資金は、平均的な生活を送る場合で約2,000万円〜3,000万円*と言われていますが、家族構成や希望のライフスタイル、年金以外の収入の有無によっても異なります。 早期退職のメリットを活かすには、マネープランを基にしたセカンドキャリア設計が重要です。
*参照元:Wealth Road|50歳55歳で早期退職!貯金がいくらあれば会社を辞められる?
退職金はどれ位もらえる?
会社員が55歳で退職した場合の退職金の額は、勤続年数や採用された職種、企業規模などによって変わってきます。厚生労働省の調査によると、大学卒業・総合職採用・勤続年数35年(57歳)で退職する場合の退職金の平均額は約1,900万円、製造業の場合は約1,750万円です*。ただし、これはあくまで平均値ですので詳しい退職金の額を知りたい場合はご自身が勤めている会社の退職金規定を確認することをおすすめします。
*参照元:厚生労働省|令和3年退職金、年金及び定年制事情調査
55歳以降に得られる年金・退職金以外の収入
次に早期退職した後、支出を賄う方法についてご紹介します。前向きで豊かな老後を迎えるには将来の年金や退職金だけに頼るのではなく、別の収入源を確保することも大切です。55歳以降に得られる収入源はどんなものがあるのか見ていきましょう。
不動産投資・株式投資
不動産投資では、物件を購入して第三者に貸すことにより定期的な賃貸収入を得ることができます。また、株式投資では株式配当金やキャピタルゲインを受け取ることができます。ただし投資にはリスクが伴うため、事前に十分な知識を身につけ調査した上で行う事をおすすめします。
再就職・シニア起業
再就職や起業によって定期的な収入を得ることができます。
得たい収入や体調に合わせた週に数日・数時間の勤務、リモートワークができる仕事など、早期退職のメリットを活かした選択ができます。
また現役時代の経験を活かして起業することも可能です。再就職や起業することで社会とのつながりを保てるというメリットもあります。
自分の時間とスキルをお金に換える
「ココナラ」「クラウドワークス」などのオンラインクラウドソーシングサイトを活用して自分の時間やスキルを売ることで、収入を得ることができます。
例えば、趣味の手芸や料理を販売する、オンラインで講座を開催する、ライティングや翻訳の仕事をするなど多岐にわたる仕事があります。自分のスキルや趣味の中に収入に変えられるものはないか、洗い出してみましょう。
55歳以降必要になる生活費以外の支出
退職後、生活費以外で必要になる支出はどんなものがあるでしょうか。可能性のある支出についてご紹介します。生活費以外の支出をしっかりと把握して、年金や退職金に頼らない資産管理をすることが大切です。
税金・社会保険料
早期退職後も収入を得た場合は所得に応じて所得税を支払う必要があります。また、併せて健康保険や介護保険などの社会保険料の支払い義務も発生します。
所得税を非課税にする場合、控除(基礎控除・給与所得控除など*)を活用して年間の収入を103万円までに抑えた働き方をおすすめします。
*参照元:
フリーウェイ給与計算|基礎控除とは~年収103万円以下だと所得税が非課税になる~
住居の補修費用
持ち家の場合、住居の老朽化や突然の故障などによる補修費用が必要になることがあります。またリフォームやリノベーションなど、定期的なメンテナンス費用も発生します。屋根や外壁材の塗り替え、水回りの修理など、予期せぬ大きな出費が発生することもあるでしょう。他にも、介護が必要になり住宅の改修やリフォームが必要になるというケースもあり得ますので、考慮しておくことをおすすめします。
家族の介護費用や医療費
家族の介護が必要になった場合、大きな金額がかかる可能性があります。『介護保険制度*』があるため、費用の一部は国や自治体から補填されますが、自己負担が必要となるケースも多くあります。また入院や通院費用など医療費の額も併せて考慮する必要があります。
その他、お墓の建設費用や葬儀の費用などが発生することも考えられますのでご自身のケースを確認しておきましょう。
*参照元:保険ROOM介護保険|介護保険における都道府県、国、市町村の権限と役割について
55歳で早期退職をした後はどうなる?
実際に早期退職をした後、どのようなセカンドキャリアの選択肢があるでしょうか。退職後の人生を充実させるためにも「早期退職のその後」についても考えておく必要があります。
早期退職後の働き方・ライフスタイル4選
早期退職した後の働き方や生活スタイルにはどんなものがあるでしょうか。4つご紹介します。
①フリーランスとして働く
自分のスキルや経験を活かして、フリーランスとして働くことができます。家やカフェなど働く時間や場所に捕らわれず自分のペースで働けるというメリットがあります。ただし、収入が不安定になる場合があるため、収入面については事前にしっかりと計画を立てることが大切です。
②希望の働き方ができる会社に再就職をする
早期退職後、新たな会社に再就職する事も選択肢の一つです。現役の頃よりも気楽にできる業務内容や、週休3日、時短勤務、在宅ワークなど希望のライフスタイルに合わせた働き方を選択することをおすすめします。
再就職後、新しい環境に馴染めず人間関係でトラブルを抱える事が無いよう、就職活動の前に情報収集をしっかり行いましょう。
③資産運用収入を生計の助けにする
株を始めとした投資商品による運用収入を生計の助けにすることもできます。退職金や貯蓄と併せて、資産運用をすることで生計の助けにすることを考えていかれるとよいです。ただし、投資にはリスクが伴うため、事前にリスク管理をしっかりと行う必要があります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)については、関連の記事をご参考にしてみてください。
関連記事:50代会社員が早期退職する場合・した時、 iDeCo(個人型確定拠出年金)への加入がおすすめの理由。退職金はどうなるの?
④セミリタイア・趣味や旅行に多くの時間を費やす
十分に蓄財ができている場合は、早期退職後にそのままリタイアまたはセミリタイアして、趣味や旅行に時間を費やすこともできます。ただし、思った以上に支出が増えてしまい「当初の予定よりも早く貯金を使い果たしてしまった・・・」というような事態にならないため、本当に余裕をもって生活が送れるか、足りなくなった場合はどうするかなど、資金計画を綿密に立てておくことが重要です。
早期退職のその後で失敗するケース5選
早期退職は、自分の時間や自由を手に入れることができる魅力的な選択肢ですが、様々なリスクや課題があるのも事実です。ここでは、早期退職をした後に失敗するケースを5つご紹介します。
①貯金・収入が足りなくなる
早期退職をすると、ほとんどの場合収入は減ります。しかし、支出については減らないばかりか増えることさえあります。自由な時間が多くなることで趣味や旅行にお金をかけたり医療費や介護費など予想外の支出が増え、年金受給前に貯金が足りなくなるケースも見受けられます。必要な資金をしっかりと計算し「毎月の支出はいくらまで」というように、年間単位で予算管理をしっかり立てておきましょう。
②健康問題が発生する
一般的に、(早期)退職をすれば仕事のストレスから解放されて健康になると思われがちですが、退職後も健康的な生活を心がける必要があります。運動不足や食生活の乱れ、睡眠不足などが原因で、生活習慣病や心身の不調を引き起こす可能性はあります。また、仕事を辞めることで社会的な役割や目標を失い、自己肯定感や生きがいを感じられなくなることも考えられます。
早期退職をすると決めたら、積極的に健康管理に取り組むことをおすすめします。定期的な運動や健康診断、バランスの良い食事や十分な睡眠をとるように心がけましょう。
③新しい人間関係にストレスがたまる
早期退職をすると仕事での人間関係から離れるため、同じ年代や立場の人との交流は減り、新しい人間関係を築く機会が増えます。
例えばボランティアやサークルなどの活動に参加する場合、自分とは違う価値観や考え方を持つ人と出会うことがあります。コミュニケーションが難しかったり対立を引き起こすこともあるかもしれません。
人間関係のトラブルやストレスを避けるためには自分の価値観に合った活動や仲間を見つけることや、意見が違う相手の立場や気持ちを理解しようとする姿勢が大切です。
④家族との関係が悪化する
早期退職をすると家にいる時間が増え、家族との時間も増える傾向にあります。一見喜ばしいと感じられますが、家族の生活リズムや習慣に合わせる必要があるためストレスに感じることもあるでしょう。
また、家族の役割分担や責任について、意見の食い違いや不満が生じたり、トラブルや喧嘩の原因になることもあります。早期退職をする場合は、家族との関係を悪化させないようにコミュニケーションを大切にし、互いの考えや感情を尊重し、協力し合うことが大切です。
⑤自分が思い描いていたプランと現実が違う
一般的に「早期退職後は自分の夢や希望を叶えられる」と思われがちですが、実際には思い通りにならないケースもあります。
旅行や趣味など楽しい予定を入れるつもりが、お金や家族の反対で諦めることがあるかもしれません。また、新しいことに挑戦するつもりが、健康の問題で挫折したり失敗を経験してやる気を失うかもしれません。
自分が思い描いていたプランと現実のギャップに後悔しないために、早期退職をする場合は自分の目標や計画をしっかりと立て、予期せぬ事態が起きた場合も柔軟に対応することや、困難に直面した時に相談できる環境を整えておくことが大切です。
早期退職制度を選ぶべきかどうか判断するポイント
それでは、どのような人が早期退職制度を選択すべきなのでしょうか。ここでは、早期退職制度を選ぶべきかどうかの判断ポイントについて解説します。
事前にチェックすべきポイント
早期退職を検討する場合、事前にチェックすべきポイントとして「生活費」や「家族の賛同」、「再就職の難しさ」が挙げられます。早期退職の場合、本来の定年よりも数年早く退職するため、数年分の収入がなくなっても問題なく生活できる資金があるかどうかの確認が不可欠です。
また、家族がいる場合は、あとで家庭内でトラブルにならないよう事前に家族からの賛同を得るようにしましょう。加えて、早期退職後に再就職を考えている人は、スムーズに再就職できない可能性も事前に踏まえて計画しておくことが大切です。
早期退職に必要な生活費の一例として、50歳2人以上世帯で約6,200万円、55歳2人以上世帯で約4,500万円というデータも示されています。詳細については以下の参考記事も合わせてご確認ください。
参考記事:
Wealth Road 2023.05.02
50歳55歳で早期退職!貯金がいくらあれば会社を辞められる? | Wealth Road
早期退職で成功しやすい人の特徴
早期退職で成功しやすい人の特徴は、しっかりと早期退職後のプランを計画している人です。たとえば、上乗せされた退職金の有効な使い方を含めた将来のマネープランや、セカンドライフを充実させるための趣味や生きがいを含めたライフプランなどです。
また、キャリアプランについてもしっかりと計画し、需要の高いデジタルやDX分野などで積極的にスキル形成を行っていける人であれば、早期退職後も充実した人生を送れるでしょう。
早期退職で失敗しやすい人の特徴
反対に、早期退職で失敗しやすい人の特徴は、一言で言えば成功しやすい人の特徴の逆です。将来のライフプランやマネープラン、キャリアプランを十分に考えず、割り増し退職金につられて勢いだけで早期退職を決断してしまうと、あとで後悔する可能性が高くなります。
早期退職で失敗しないためには、制度を活用する前に自分自身のセカンドライフをしっかりと計画することが重要です。
早期退職に失敗しないための3つのポイント
ここでは、早期退職に失敗しないための3つのポイントについて解説します。
ポイント1 :どのように退職金を受け取るのかを決めておく
早期退職でもらえる割り増しの退職金をどのように受け取るのかを事前に決めておきましょう。退職金の受け取り方法は以下の3パターンです。
・退職年金(雑所得)
・退職一時金(退職所得)+退職年金(雑所得)
退職一時金のメリットは、退職所得控除が適用されて税負担が軽減される点です。それに対し退職年金では、退職所得控除は適用されません。また、雑所得として課税されるため、他の所得と合わせた場合に税率が高くなる可能性がある点には注意しましょう。
企業によっては、退職一時金と退職年金を組み合わせるパターンもあります。
ポイント2:セカンドライフで必要な資金の準備を行う
早期退職に失敗しないためには、セカンドライフで必要な資金の準備を行うことも重要です。セカンドライフに必要なおおまかな資金は、毎年の生活費と平均寿命などを基にした残りの生活年数を掛けることで求められるでしょう。そのうえで、将来の不測の事態にも備えて、多少余裕を持った資金計画をしておくとより安心です。
ポイント3:セカンドキャリアについてもしっかりと計画しておく
人生100年時代と言われる現代では、セカンドキャリアについてもしっかりと計画しておくことが大切です。早期退職後のセカンドキャリアとして、再就職や独立、起業など、自分自身の希望に照らして考えていきましょう。いずれのパターンを選択する場合でも、スキルの棚卸しや新しい知識・スキルの学習は重要になってきます。
早期退職を利用してセカンドキャリアを設計しよう!
早期退職を利用してセカンドキャリアを設計する際は、以下の手順に沿って計画していくことが効果的です。
1)ライフプラン
まずは土台となるライフプランです。早期退職後にどのような人生を送りたいか、どの地域に住みたいかなど、根本となる生活プランを計画していきます。ライフプランの具体例については、以下の関連記事も合わせてご確認ください。
関連記事:
「ライフプランの具体例を紹介!定年からの人生設計で老後資金を割り出そう」
2)マネープラン
次にマネープランです。早期退職によって受け取る退職金や毎年の生活費、年金などを総合的に勘案し、生活するために必要な資金を準備・計画します。
3)キャリアプラン
続いてキャリプランです。これまでの業務経験や今後の自分自身の希望を踏まえ、セカンドキャリアを設計していきましょう。50代会社員のセカンドキャリアを考える際は、以下の関連記事も合わせてご確認ください。
関連記事:
「【50代会社員のセカンドキャリア】希望のキャリアを実現するための準備や支援とは?」
4)あなたのスキルや経験の棚卸し
キャリアプランを計画した後は、あなたのスキルや経験の棚卸しを行うことも大切です。そして目指したい仕事や働き方といったキャリアプランと比較し、ギャップを明確にしていきましょう。
5)学び直し
スキルや経験の棚卸しによって目指すキャリアプランとのギャップを明確にできたら、学び直しによってギャップを埋めていきます。学び直しでは、スキルの掛け合わせで差別化を図ることがポイントです。
たとえば、「経験xIT」という掛け合わせをすると、今の時代に求められるようになり、目立つ存在となります。基本的なPC操作もスムーズに行えるようになることで、即戦力として職場にジョインできる印象を与えられるでしょう。
また、セカンドキャリアでは新しい部署や職種に移ることもあり、デジタルやDXなど今まで経験したことがない分野を求められるケースもあります。デジタル化の対応に不安がある人にとっても、「経験xIT」の掛け合わせは効果的です。
セカンドキャリアで活躍できるシニアIT人材のポイントについて興味のある人は、以下の関連記事も合わせてご確認ください。
関連記事:
「ITスキルがあれば定年後も怖くない?生涯活躍できるシニアIT人材になるための失敗しない4つのポイント」
6)稼ぎ直し
学び直しと合わせて、稼ぎ直しの設計を行うこともポイントです。たとえば、フリーランス・副業としてクラウドワークスなどで稼ぐスキルを獲得できれば、会社に所属しなくても個人で収入を得られるようになります。他にも、パート・バイトを含めた仕事探しのスキルや一人起業で稼ぐスキルを獲得できれば、より幅広い選択肢でセカンドキャリアを考えていけるでしょう。
まとめ
今回は50代での早期退職について、概要からメリット・デメリット、早期退職が活かせる人の特徴などを解説しました。
早期退職には退職金の上乗せや、定年を迎える前に新しいキャリア形成ができるという魅力的なメリットもあります。しかし、年金受給額が減る可能性や転職後の収入ダウンなど、デメリットも存在します。
早期退職を検討する際は勢いだけで決断せず希望のセカンドキャリア・ライフプラン・マネープランの見通しを立ててじっくりと計画的に進める事をおすすめします。
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20年以上に渡り金融機関に勤務している「生粋の金融人」です。FP仲間の情報や勉強会・お金にまつわるニュース等をわかりやすく簡単な言葉で発信しています。 FP技能士2級・AFP・日商簿記2級